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彼は初めて世界を見るかのように、
あたりを見まわした。

世界は美しかった!
世界は多彩だった!
世界は珍しく謎に満ちていた!

ここには青が、黄が、緑があった。

空と川が流れ、森と山々がじっとしていた。

すべては美しくなぞに満ち、
魔術的だった。

そのただ中で、彼シッダールタ、
目ざめたものは、自分自身への道を進んでいた。

このすべてが、この黄と青が、

川と森が初めて目を通って
シッダールタの中に入った。

それは、もはやマーラ(魔羅)の
魔法ではなかった。

マーヤ(迷い)の
薄ぎぬではなかった。

多様をさげすみ、
統一を求めて深く思索する
バラモンのけいべつする、
現象界の無意味な偶然な
多様ではなかった。

青は青であった。
川は川であった。

シッダールタの中の青と川には、

神性を有する一つのものが
ひそんで生きていたとはいえ、

ここは黄であり、青であり、
かしこは空であり、森であり、

これはシッダールタである
ということこそ、

神性を有するもののありようであり、
意味であった。

意味と本質はどこか
物の背後にあるのではなく、

その中に、いっさいのものの中にあった。


ヘルマン・ヘッセ『シッダールタ』(高橋健二訳/新潮文庫)
2010.12.31 Comment:2 | TrackBack:0
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